経営者のひとりごと

小さな会社の経営者になり1年を終えて

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5年程勤めていた会社の代表が、取締役で入っていた別会社でIPOを目指す(準備段階に入った)ことになり、内部ちょこちょこ外部ちょこちょこ、株式譲渡を経て昨年6月、事業承継しました。

そして、この6月でちょうど1年が経過。

既に出来上がった仕組みに不自由を感じながらも、会社としては良い結果で1期を終えることが出来ました。まだ手探りかつ肌感に頼って判断している箇所も多く、自分でも荒削りな印象はありますが、最終数字として結果に繋がっているのであれば良しかな、と総評しています。
そして、これからは第2創業期として、多彩に仕掛けていくフェーズに映っていきたいと考えています。

この1年間、自分なりにですが「経営者」って何すれば良いんだろう?をテーマにインプットを多めに動いてみました。低学歴コンプレックスがあるわけではないのですが、MBAを取得しているわけでもなく、企業へのコンサルティング経験があるわけでもなく、“ビジネス教養”においては欠如している自覚がありました。(そこを自信持ってどうする、っていう笑)

就任後しばらくは、まだ手持ちの案件もあり、プレイヤーとして社内にこもりがちでしたが、半年を終えてからはちょっとした自分探しの感覚で積極的に人と会うようにしました。
ベタですが、経営者交流会や懇親会付きのセミナー、朝会、企業訪問、コワーキングスペース等など、営業電話も“少しでも興味あれば”を基準にバンバン会ってみました。

そんな半年を経てというわけではないのですが、代表就任から1年経ったこともあり、自分なりに出た現時点での「小さな会社の経営者論」をザッと書き出してみることにします。“経営者論”なんて言ってますが、いち個人としての考え方のまとめなので、備忘録と言った方が適切かもしれませんね…

1. 2代目バイアスはウザい

うちの会社は今年で設立15年になります。立ち上げ当初はOA機器の販売をしていて、WEB事業をスタートさせてからは約12年。
実際、私自身は2012年に入社しているため、それ以前の事は知らないのですが、最近では関西のWEB制作会社の中でも知名度が上がってきて、選ばれるようになってきました。(「ホームページ制作 大阪」で5年以上上位表示しているのもあるかと)

現在はWEB制作がメイン事業なのですが「WEB制作会社で設立15年」となると、コレが絶妙な社歴の長さ。老舗じゃないけど、短くもない、という。
なので、初見の方には「丸山さんって創業者なの?」とよく聞かれます。

そして、ここで2代目というフレーズを出すとよく起こるのが「どうせ、ところてん就任じゃないの?」というバイアスがかかります。親父さんが創業して、どーせ息子可愛さに後を継がせたんでしょ?、的な。

しかし私の場合は血縁関係もなにも無い人間からの事業承継。そのためケースとしては割と珍しいかと思いますが、ここのバイアスが正直な話・・・割とウザい笑

は?知らねーよ!
ってかお前誰だよ!

…と、わずか1年の間で何度思ったかわかりません。

また反対にネガティブなケースもあり「創業者でないから、会社を大きくしたのも自分ではない」という事実に直面することも多々ありました。

実際のところ、WEBサイトの受託制作は非常に楽しい事業ではあるのですが、あまり大きくは儲かりません。ベースが労働集約型のため、人が効率的に動いてこそ利益が生まれます。そのため独自のWEBサービスやアプリ等がない限り、(もちろん全てがそうではありませんが)企業として急成長を見せることは難しい傾向にあります。

それでも20名のスタッフを雇える程の規模にした先代は、やはりタフだなと尊敬します。

これをプレッシャーと言うのかもしれませんが、自身の中ではこの両側面での2代目バイアスの苦労は大きかったです。(今は特に…なんともですが笑)

2. 現場に指示する程「やってる感」に支配される

小さな会社によくある代表のプレイングマネージャー体制。代表自ら動く分、結果にも直結しやすく全体の指揮も高まりやすい特徴があります。
また「現場に任せないと人が育たない」といった観点からも、組織のトップが現場に直接支持を出すことはNGとされています。

その思考性が強かったのか、先代は現場に対する直接的な支持を出すことは滅多にありませんでした。

そして私の場合は「現場あがり」という、制作者と同じ目線に立てることにメリットを感じていました。いちスタッフとして現場で業務に携わっていた時に感じていた“無駄な作業” “不毛な摩擦”を排除しようと奮起し、現場にもガンガン支持を出していました。

現場に寄り添った経営をしようと、どこか先代を反面教師として経営方針を模索していたんだろうと思います。

結果として、現場と一体感のある組織体制を構築することができました。

しかし、ここで大きな問題点が2つ。

1つは、この一体感を創出するために、自身としての行動範囲が制約されてしまったこと。出会いの機会・自身としての新しい情報のインプットがかなり制限されていました。

そして2つは、結果(数字)にそれ程大きな変化がなかったこと。まったくないわけでもないですが、劇的な変化は見られませんでした。

現場の声としては「以前より働きやすい」「やりがいを感じる」と好評でしたが、会社として肝心の数字が伴っていなかったのです。もちろん、即効性のある取り組みでもないため、結果につながるには時間のかかることかもしれません。

ただ何よりも重要な事実として、自分自身が支持を出していることへの“達成感”に支配されている、と実感するようになったのです。行動範囲も狭まり、結果が大きく変わることでないのであれば、ある程度は現場に任せて、自分は先を見据える。

当たり前なのですが、それが組織としての未来の切り開き方なのかな、と漠然と思い描くようになっています。

3. 「こうあるべき」なんて気にしない方がいい

とある経営者交流会に参加し、その中でひとりの社長さんが「部下との接し方」について言及していました。
どうやら、数日前に行った勉強会であなたのやり方は間違っている!と否定されたそうで、依然納得いかない様子でした。(内容としてはよくある「部下とは仲良くするな!飯に行くな!」というやつです)

これはその社長さんの話を聞いて思ったことなのですが、個人的にも「はぁ?」と感じました。確かに組織のトップとして贔屓お気に入りが出来てしまうことは、周りへの配慮が足りないと言われかねません。

ただ、いち個人として「そんな生活、おもんないわ!」とも純粋に思います。

以前に「なぜ会社員は社畜だと言われるのか」という記事を書き、その中でも触れましたが、今自分の中でのひとつの答えになっていることがあります。

小さな会社に役職は不要、だということ。

毎日働いてくれてるスタッフと仲良くなりたいのは誰だってそうで、いち個人としてコミュニケーションを取れないなんて、不自由過ぎます。しかし、この不自由が会社という組織内でのカーストが原因なのであれば、それを無くしてしまえば良くないか、と思うのです。

だからこそ役職なんて不要で「経営者(会社)はこうあるべき」というのも個人レベルで考えると、結果自己責任でもあるため、気にしなくて良いんだな、と感じるようになりました。

4. 群れるのは心地良い。 けど、その先には何もない。

・知見を広めたくて、様々な勉強会やセミナーに参加
・フットワークや行動範囲を考えて、普段の仕事を外で出来るようにコワーキングスペースを転々とする
・経営者としてのベースアップとして同じ志のあるスクールに参加

など、手当たり次第とまでは行きませんが、ざっくりと経験してみて気付いたことがあります。

それは「共通項のある人を探してしまう」こと。

これは頭では理解していたけど、言語化できなかった潜在的な感覚で、佐々木俊尚 @sasakitoshinao さんの「広く弱くつながって生きる」を読んで、再認識しました。

同業と言ってますが、これは「経営者」という繋がりでも同じで、自分が共通項のある人を探して、群れようしているなと実感した瞬間がありました。そして自分の考えを肯定して欲しい、承認欲求だということに気付いたのです。

人の集まる場はどこも既にコミュニティ化していることが多く、そういう場に多く足を運べば運ぶ程、正直居心地が良くなります。

そして大半が
・とりあえず飲みに行く
・そこでクライアントの愚痴を言う
・その場にいない人の噂話をする
・ちょこちょこ自分の方がイケてる感を出す

とパターン化されています。

もちろんそうじゃない場もありますが、大体こうです。

コミュニティとして人の出入りが激しいところは、刺激的でいつ参加しても得るものがありますが、7割方決まったメンバーで固定されたケースだと、あまり有益な情報を得ることはできません。(みんなで新規事業をつくるのであれば話は別ですが)

その集大成として、同業の知り合いから「情報交換」と称してよく連絡が来るようになりました。10文字程度の返信に対し、300文字ほどの文面で応えるような事をよく行っていたのですが、ある時珍事に発展しました。

※「お前がナメられてるだけでは?」という意見は、そっと胸の奥にしまってください

これが原因というわけでは無いのですが、これをきっかけに時間の消耗得るもの(自分の興味度合い)を考えるようになりました。
またコミュニティとしても、多少のノイズがあるからこそ知恵を使うわけで、心地良過ぎるとただの甘えになってしまうのかな、と。

あとは何よりも自分ペースでは動けなくなるのが自分の性分には合っていない、と自分を見つめ直す良いきっかけにもなりましたね。

5. 経営者とスタッフ、責任は違えど「立場は対等」でいい

働くこと(仕事)は個人の人生においては、ひとつの通過点です。長い人生の中、大半の方は20歳を超えると40年近くは働くことになるかと思います。その40年の中から見ると、うちの会社で働く期間なんて、ほんの僅かかもしれません。

長い仕事生活の中で、期間はどうであれ誰しも楽しく働きたいに決まってます。これはもちろん自分にも当てはまることで、だからこそ本質としては頑張れ!とは言いたくありませんし、自分も頑張りたくはありません笑

誤解を招く言い方ですが要は、立場は常に対等であるべき、と思うようになりました。

働くことには色々な理由があるわけで「お金」「生活」「夢」「スキル」「名声」「経験」など必ず手に入れたい何かがあります。しかしそれは常に変化するわけで、個人の人生を考えれば必然なことです。時には面倒くさくなるし、時にはスゴく充実感を得るときもあると思います。

捉え方によっては「過度な期待はしない」に近い冷たい対応に感じるかもしれませんが、自分ファーストな考えが一番しっくりきますし、実際これからはそういう時代になっていくと思います。(組織は個人の野望を実現するためだけの場所になるのでは・・・と)

そして何よりも、自分が楽しくありたい。

これに尽きます。


これは、採用の代表メッセージを考えている時に、思ったことです。
自分がどんな人と一緒に働きたいのかな?と考えた時に、働きたい人の意思を何よりも尊重したいと思ったのがきっかけでした。それはなぜかと言うと「自分がそうだったから」。

つまり、あまり口出しして欲しくない、ということです笑

みんなに働きやすい環境を提供するのは、俺が気持ちよく経営したいから!

これが真実だと今、思っています。

6. 働き手が楽しめない会社(構図)は終わってる

代表に就任し、これからはどんな組織に?という質問を数多く受けました。初めの方は「そんなの今はねーよ!ってか、探してるとこだよ!」と胸の中で思ってたのですが、ある時を境に「目の見える・手の届く範囲の規模で良いから、とりあえず楽しめる環境にしたい」と圧倒的な個人的に意見を応えるようになりました。

会社の代表として、この小さな野望が合ってるかどうかは怪しいですが、分からないものは分からないで大切にしていることだけを抽出すると、この表現になったのです。

もちろん成長意欲がないわけではありません。

停滞していて、楽しい日々が実現するはずがありません。成長してこそ、明るい未来が築けると思っています。

ただ純粋に自分も働き手も楽しめないと終わってるな、と感じたのです。

この頃、IPOを目指す会社のスタッフと話す機会があって「プライベートの時間を削って会社に貢献することが正義なのか」と問題提起していました。転勤・異動に関しても同様、「文句言わない人間」はガンガン出世していくらしいのです。

もちろん、この意見の母数にも寄りますが、率直に「働き手が楽しんでいない構図、って終わってんな」と思ったのです。(IPOの場合は、実際そこを乗り切ると、明るい未来が待っていると思いますが)

その他

◎ 中小企業のミドル層の8割は頭打ち状態(らしい)
◎ そしてどこも「次世代の構築」が経営課題(だと感じた)
◎ 経営者交流会にて、代表として来てるのに、そこでスタッフの悪口を言う経営者はクソ
◎ 理念が言葉としてポンポン出てくる社長さんは見ててカッコいい(ってか惚れる)
◎ ベタですが…ゴルフしてる人・酒好きが多い笑

【まとめ】何よりも、大切な人がいると勇気100倍

色々書きましたが、何よりこれに尽きます。

たった1年ではありますが、歯ごたえも手応えもある時間でした。

2代目としての苦悩から、社長業1年生としての試練、自分自身の未熟さ含め、第2創業期として更に知見を広めていきたいと考えています。今期は自身として興味のあることには積極的に首を突っ込んでいきますので、またこのnoteでも共有できることが増えるかと思います。

これからも会社の代表っぽくない、純粋な感想を個人のライフログとして書き溜めて行きますので、気軽に読んでもらえればと嬉しいです。

投稿者: Takanobu Maruyama

大阪でWeb制作会社「株式会社ユニオンネット」、高知の馬路村でデザイン事務所「ミトネデザイン」を運営。経営・人事・広報、たまに制作者でもある香川県生まれ3児の父です。
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